Japan Arts
07/06/16 (Wed)
Open Time 18:30 / Play Start 19:00
Tokyo Opera City Concert Hall
(Tokyo)
Mikhail Pletnev Recital & Concert
Mikhail Pletnev, Piano
Bach
Prelude and Fugue in A minor BWV543
Grieg
Piano Sonata in f minor Op. 7
Ballade in the Form of Variations on a Norwegian Folk Song Op. 24
Mozart
Piano Sonata No. 9 in D major K. 311
Piano Sonata No. 14 in c minor K. 457
Piano Sonata in F major K. 533
2006年末の突然のピアニスト引退宣言で世間を驚かせたプレトニョフ。既存の作品像に拘らず、想像力を翔かせたクリエイティヴな解釈を見せる彼にとって、今日のピアノでは自分が心に描く音楽が表現できないというのがその理由だった。しかし河合楽器の「SHIGERU-KAWAI EX」との出会いが彼を翻意させる。これこそ自分の求めていた楽器だと確信した彼は再びピアノに向かい、自身の理想の表現を追求することになったのだ。
ピアニスト復帰後間もない前回2014年の来日公演は、そうした彼の音楽世界を見事に開陳するものだった。強靭かつ明晰な技術を土台に、以前にもまして音色も表情が濃やかになったその演奏からは、彼のやりたいことがはっきり伝わってきた。モーツァルトにおける古典の枠を取っ払ったファンタジーの飛翔、シューマンの協奏曲や「フモレスケ」での情感のドラマ、ベートーヴェンの「テンペスト」で示した演劇的ともいえる大胆な音の身振り。たしかにこうした表現は以前のプレトニョフにも見られたが、そこに深い翳りや厳しいまでにシリアスな緊張感が加わり、内奥の未知の世界に斬り込もうとする姿勢が鮮明になっていた点が、以前の彼とは一味違っていた。
今回のリサイタルのメインはグリーグとモーツァルト。モーツァルトは前回に引き続き時代の様式に捉われない自在なアプローチが楽しみだが、特に注目したいのはグリーグだ。グリーグを愛する彼はソナタを含むグリーグ作品集のCDをかなり以前に作っているが、今の彼がいかにこの作曲家に挑むのか興味が尽きない。北欧作曲家というイメージに捉われない新たな角度からグリーグに光を当ててくれるのではないだろうか。
協奏曲の夕べはスクリャービンとラフマニノフの有名な第2番。お国ものの2曲だが、ロシアのロマン的伝統スタイルとは全く違った視点から作品を再創造してくるに違いない。特に聴き慣れたはずのラフマニノフの第2番が一体どんな姿で立ち現れるのか、期待が高まるばかりである。
寺西基之(音楽評論家)
S席:11,800円(10,800円)/A席:9,700円(8,700円)/B席:7,500円(6,800円)/C席:5,400円(4,800円)
主催者HP https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=403