Japan Arts
09/22/16 (Thu)
Open Time 13:30 / Play Start 14:00
Tokyo Opera City Concert Hall
(Tokyo)
Yukio Yokoyama Beethoven: The Complete Piano Concertos
Yukio Yokoyama, Piano
Triton Harumi Orchestra
Beethoven
Piano Concerto No.1 in C major, Op.15
Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op19
Piano Concerto No.3 in C minor, Op.37
Piano Concerto No.4 in G major, Op.58
Piano Concerto No.5 in E-flat major, Op.73 ≪Emperor≫
室内オーケストラで聴く
横山幸雄のベートーヴェン協奏曲
2005年8月6日、真夏の土曜日の午後、横山幸雄はジャパン・チェンバー・オーケストラとの共演によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会でベートーヴェン鑑賞の新しい時代を切り拓いていた。1992年、すでに東京都響のソロ・コンサートマスターになっていた24歳の矢部達哉が在京オーケストラの首席奏者や俊英ソリストたちと結成したジャパン・チェンバー・オーケストラは指揮者を置かないオーケストラとして注目され、真摯な音楽作りから生まれるまさに室内楽的なと形容したい精緻なアンサンブルと生彩に富んだ音楽表情で注目され、1999年からはパルテノン多摩を拠点としてバロックから現代にいたる幅広いレパートリーによる定期演奏会シリーズを展開していた。中でも2000年から2004年にかけて、当時話題になっていたジョナサン・デル・マールによる新校訂楽譜を使ったベートーヴェン交響曲全曲演奏会は大きな注目を浴びた。この演奏会シリーズのライヴ録音によるCD全集は今でも新鮮さを失っていない。この延長線上に2005年の夏の横山幸雄とのコラボレーションがあったのだ。
横山幸雄はすでに1998年から99年にかけて彩の国さいたま芸術劇場で12回にわたって、作品番号をもつベートーヴェンのピアノ作品全44曲による演奏会を敢行していた。各回の演奏曲目の組み立てにおいて、コンサート一期一会それぞれの一夜の響きに意味と特徴を持たせるというこだわりを見せた。こうした連続演奏やシリーズ演奏について横山は「すべてを一気に演奏することに意味がある」と断言するのだが、この言葉の裏に「ベートーヴェンのピアノ協奏曲を理解するには、5曲それぞれの成立過程を知り、究極に向かって段階的に変化する個々の作品の表現様式の違いを知るためには」という前提が隠されている。つまり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲は18世紀の伝統様式から19世紀の全く新しい表現様式への革新を遂げる過程を示す絵巻物になっており、この巻物を紐解きながら全容を見ることで作曲家ベートーヴェンの真意が初めて見えてくるというわけである。
晴海の海を臨む第一生命ホールを拠点として昨年結成された新生室内オーケストラは矢部達哉をコンサートマスターとする新進気鋭ぞろいの「トリトン晴れた海のオーケストラ」だ。ベートーヴェン解釈においてそれぞれに一家言を持ちながら気脈の通じた横山と矢部がどのような名演を繰り広げるか大いに期待したい。
平野 昭(音楽評論家)
S席:10,000円(9,000円)/A席:7,500円(6,800円)/B席:5,000円(4,500円)
主催者HP https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=444