Japan Arts

10/15/16 (Sat)  Open Time 18:15 / Play Start 19:00
Tokyo Bunka Kaikan (Tokyo) map

The Mariinsky Orchestra Special Concert

Valery Gergiev, Artistic and General Director
Alexander Malofeyev, Piano
The Mariinsky Orchestra


Tchaikovsky
Overture Fantasie "Romeo & Juliet"
Piano Concerto No.1 in B-flat minor Op.23
Symphony No.5 in E minor Op.64


センセーショナルな興奮を巻き起こす!
ゲルギエフの特別な勝負曲、チャイコフスキー交響曲第5番

あらゆる聴き手を夢中にさせ、狂わせてしまう音楽――その究極的な例のひとつが、ゲルギエフの指揮するチャイコフスキーの交響曲第5番ではないだろうか?
この曲は、はるかな北の大地を思わせるスケール、憂鬱と涙と憧れ、そして最後は我を忘れたような高揚感へと至る、壮大なドラマである。あまりにポピュラーな人気作品だが、そこに真実味を与えることのできる指揮者はごく一握りしかいない。その筆頭がゲルギエフである。かつてゲルギエフは1998年ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルを指揮してこの曲でセンセーショナルな興奮を巻き起こし、その録音はいまも代表的名盤として知られる。その後も節目節目でこの曲をとりあげてきた。いまやゲルギエフの絶対的な勝負曲ともいえる、特別なレパートリーだ。
以前この曲をゲルギエフがリハーサルするのを見学したことがある。そこで特に印象的だったのは第3楽章の解釈だった。中間部のヴァイオリンの細かいパッセージに「妙なアクセントをつけるな!」と指示するゲルギエフは、このワルツに現実離れした浮遊感や、あてもなくさまようような幻想的イメージを持っていることがよく伝わってきた。彼がこの曲に対して抱いているビジョンは、やはり深みが違う。
近年のマリインスキー・オーケストラは、10年前、20年前と比べてもさらに充実著しく、完全に世界のトップの一角として定着した。その理由はいい意味での世代交代だ。最近の映像を観ても、ゲルギエフの統率のもと、若い実力ある楽員たちがますます精気みなぎる熱い演奏を繰り広げている。最高の状態、と言ってもいいだろう。
今回もうひとつ注目されるのは、2001年モスクワ生まれの15歳、アレクサンドル・マロフェーエフが同じくチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のソリストとして参加すること。ロシア国内の主要コンクールで軒並み連続優勝を続ける彼の演奏を、私もいくつか聴いてみたが、繊細と大胆を兼ね備えた、これはとてつもない逸材である。まだあどけない風貌なのに、空いている左手で指揮するようなしぐささえ見せるユニークさ。このまま順調に行けば、数年後はきっと世界を騒がせる存在になるだろう。見どころの多いコンサートとなりそうだ。

林田直樹(音楽ジャーナリスト・評論家)


S席:21,600円(20,500円)/A席:18,300円(17,200円)/B席:14,000円(12,900円)/C席:10,800円(9,800円)/D席:7,500円(6,800円)

主催者HP https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=462