Orchestra Tokyo
Yoshihide Miyanoya, Conductor
Total Time : [00:31:04]
Copyright : Yoshihide Miyanoya
Ludwig van Beethoven
Symphony No.5 in C minor, Op.67
1. Allegro con brio
2. Andante con moto
3. Allegro
4. Allegro
Time : [00:31:04]
2013-09-11
Tokyo College of Music
Tokyo, Japan
2013-09-11
Tokyo College of Music
Tokyo, Japan
Wir endlichen mit dem unendlichen Geist sind nur zu Leiden und Freuden geboren, und beinahe konnte man sagen, die Ausgezeichnetsten erhalten durch Leiden Freude.
「無限の心と有限の命をもつ私たちは誰もが悲しさも喜びも併せ持つ宿命にあります。ですから悲しみを乗り越えて喜びを手に入れることこそ最も尊いと言えるのではないでしょうか 」
ベートーヴェンが実際に書いた手紙の一節です.。交響曲第5番は、彼のこの信条を最も端的に直接的に表すことに成功した音楽だと思います。私はクラシック音楽にまだ馴染みがなかった小学生の頃から、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の演奏で交響曲を何度も聴き、ソプラノリコーダーで旋律をなぞってボストン交響楽団と一緒になって無我夢中で吹いていました。演奏が終わると 絶望的に思えた現実が不思議と前向きに受け止められる、この曲の「魔法」にすっかり魅了されていました。本当に何度救われたか知れません。私にとってこの交響曲第5番は命の恩人といっても過言ではない大切な存在です。この曲が誕生してどれだけ多くの人の心を勇気づけたのでしょう。
よく言われることですが、第九とこの曲ほど習慣的にデフォルメされてきた曲もなかなかないと思います。短調の苦悩に満ちた響きは重々しく、輝かしい場面ではことさらに大げさにロマン主義的に演奏されることが、一昔までは当たり前でした。往年の巨匠の演奏は確かにベートーヴェンの精神を鮮やかに感じさせてくれる一方で、時にどこか演説や弁士のような大袈裟さ、恣意的な表現も目立ちました。近年は、「作曲家の意図や楽譜どおりに」、古典的に演奏することが主流になり、ベートーヴェンの表記したテンポで、スタイリッシュな演奏が多くなりました。どちらの立場が正しいかを論じるつもりはありません。むしろどちらの立場でも音楽が説得力を持ちえるほどに、この音楽が全楽章を通して、極めて理性的に、かつ愛情をもって人間の感情「怒り」、「慈しみ」、「哀しみ」、「喜び」に寄り添うことを可能にした奇跡の1曲だと思います。
自分にとって特別な存在であるこの音楽を録音するにあたり、私はこの曲を通して、ベートーヴェンの声を聞きたいと思いました。大勢に演説するのではなく、目の前にいる人に情熱の限りを尽くして語りかけてくれる無二の友人のようなベートーヴェンの声を、私は聞きたいと思いました。非常に難しいことでしたが、緊張感のあるビートを維持しながらも、私自身が感じるフレーズの自然な流れ、自然な息遣い、ニュアンスを再現しようとつとめました。人は語りかけるときには、文字には表現できない感情を伴った抑揚や変化があります。取り組めば取り組むほど、あらためて緻密に作られたこの音楽の奥の深さを感じ、とてつもない巨人に立ち向かうような心持ちになりましたが、オーケストラのメンバーの積極的な協力をいただき、ベートーヴェンがこの交響曲を作曲した年と同じ38歳だった自分が、全力で同じ人間として語り合いたいと思って挑んだ録音です。
日本で最も有名なクラシック音楽で必ず名前が挙がる名曲、冒頭のテーマを知らない人はいないと思います。それほど有名な曲でも、クラシック音楽を好きな方でないと、なかなか全曲通して聴いたことがある人がいない事に驚かされます。確かに、冒頭のインパクトは素晴らしいし、各楽章それぞれ充実していて聴き応えがある曲です。ですが、交響曲全般に言えることですが、中でもベートーヴェンの交響曲、その中でも第5番「運命」こそ、全曲通して聴く事で初めて「真価」が伝えられる音楽だと思います。
私が小学校時代に体験した思い、そしてベートーヴェンの声を、皆様おひとりおひとりの心の中で共有させていただければ幸いです。(Miyanoya)
オーケストラ・トウキョウ
宮野谷義傑(指揮)
「無限の心と有限の命をもつ私たちは誰もが悲しさも喜びも併せ持つ宿命にあります。ですから悲しみを乗り越えて喜びを手に入れることこそ最も尊いと言えるのではないでしょうか 」
ベートーヴェンが実際に書いた手紙の一節です.。交響曲第5番は、彼のこの信条を最も端的に直接的に表すことに成功した音楽だと思います。私はクラシック音楽にまだ馴染みがなかった小学生の頃から、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の演奏で交響曲を何度も聴き、ソプラノリコーダーで旋律をなぞってボストン交響楽団と一緒になって無我夢中で吹いていました。演奏が終わると 絶望的に思えた現実が不思議と前向きに受け止められる、この曲の「魔法」にすっかり魅了されていました。本当に何度救われたか知れません。私にとってこの交響曲第5番は命の恩人といっても過言ではない大切な存在です。この曲が誕生してどれだけ多くの人の心を勇気づけたのでしょう。
よく言われることですが、第九とこの曲ほど習慣的にデフォルメされてきた曲もなかなかないと思います。短調の苦悩に満ちた響きは重々しく、輝かしい場面ではことさらに大げさにロマン主義的に演奏されることが、一昔までは当たり前でした。往年の巨匠の演奏は確かにベートーヴェンの精神を鮮やかに感じさせてくれる一方で、時にどこか演説や弁士のような大袈裟さ、恣意的な表現も目立ちました。近年は、「作曲家の意図や楽譜どおりに」、古典的に演奏することが主流になり、ベートーヴェンの表記したテンポで、スタイリッシュな演奏が多くなりました。どちらの立場が正しいかを論じるつもりはありません。むしろどちらの立場でも音楽が説得力を持ちえるほどに、この音楽が全楽章を通して、極めて理性的に、かつ愛情をもって人間の感情「怒り」、「慈しみ」、「哀しみ」、「喜び」に寄り添うことを可能にした奇跡の1曲だと思います。
自分にとって特別な存在であるこの音楽を録音するにあたり、私はこの曲を通して、ベートーヴェンの声を聞きたいと思いました。大勢に演説するのではなく、目の前にいる人に情熱の限りを尽くして語りかけてくれる無二の友人のようなベートーヴェンの声を、私は聞きたいと思いました。非常に難しいことでしたが、緊張感のあるビートを維持しながらも、私自身が感じるフレーズの自然な流れ、自然な息遣い、ニュアンスを再現しようとつとめました。人は語りかけるときには、文字には表現できない感情を伴った抑揚や変化があります。取り組めば取り組むほど、あらためて緻密に作られたこの音楽の奥の深さを感じ、とてつもない巨人に立ち向かうような心持ちになりましたが、オーケストラのメンバーの積極的な協力をいただき、ベートーヴェンがこの交響曲を作曲した年と同じ38歳だった自分が、全力で同じ人間として語り合いたいと思って挑んだ録音です。
日本で最も有名なクラシック音楽で必ず名前が挙がる名曲、冒頭のテーマを知らない人はいないと思います。それほど有名な曲でも、クラシック音楽を好きな方でないと、なかなか全曲通して聴いたことがある人がいない事に驚かされます。確かに、冒頭のインパクトは素晴らしいし、各楽章それぞれ充実していて聴き応えがある曲です。ですが、交響曲全般に言えることですが、中でもベートーヴェンの交響曲、その中でも第5番「運命」こそ、全曲通して聴く事で初めて「真価」が伝えられる音楽だと思います。
私が小学校時代に体験した思い、そしてベートーヴェンの声を、皆様おひとりおひとりの心の中で共有させていただければ幸いです。(Miyanoya)
オーケストラ・トウキョウ
宮野谷義傑(指揮)